“LINE”ブランドのサービスとして譲れないUIのこだわり 「LINEマンガ」リニューアルの裏側を探る

“LINE”ブランドのサービスとして譲れないUIのこだわり 「LINEマンガ」リニューアルの裏側を探る
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2019/09/24 08:00

 アプリや「LINE」上で気軽にマンガ作品を楽しむことができるスマートフォン向け電子コミックサービス「LINEマンガ」。2013年4月のサービス開始以降、250社以上の出版社・レーベルを通じ、現在までに38万点以上のマンガを配信。アプリのダウンロード数は、2019年4月時点で2,300万を超える。そんなLINEマンガが昨年5月、サービス開始以降初となるサービスの大型リニューアルを実施した。UI刷新のポイントとは。LINEのサービスだからこそのこだわりとは――。LINE株式会社のUIデザイン4チームでマネージャーをつとめるヒョンマンさんに話を伺った。

LINEブランドの価値観に合ったデザインとは

 LINEブランドのデザイン組織は、プロダクトやサービスに紐づいているものではない。会社全体の、UI/UX、ブランドデザイン、イラスト制作、映像制作、スペースデザインの5つを担う「クリエイティブセンター」という組織が、独立した形で存在している。そのためクリエイターは、ひとつのサービスだけでなく、さまざまなプロジェクトに並行して携わっている。そのため、ヒョンマンさんも、「LINEノベル」、「LINE着せかえ」など、複数のサービスに並行して携わっているのだ。

 ヒョンマンさんがLINEマンガを担当したのは、サービスリリース直後。LINEマンガが、作品を購入する「ストア」機能、それを閲覧する「ビューアー」機能、購入した作品を整理する「本棚」機能という当初のシンプルな構成であったころだ。

 2014年4月からは、ライトノベル作品の提供もスタート。サービス開始からわずか1年で、累計ダウンロード数は500万を超えた。サービス開始から6年後の2019年4月には、国内のスマホマンガアプリにおける累計ダウンロード数では、国内ではトップとなる2,300万を突破。「毎日無料」タブで新しい作品を読んでいるユーザーは1秒に7.8人におよぶなど、国内最大の電子コミックサービスへと成長を遂げた。

出典:LINE株式会社 プレスリリース
出典:LINE株式会社 プレスリリース

 だからこそUIデザインにおいても「多くのユーザーが利用するサービス」という観点は欠かせないとヒョンマンさんは考える。

「マンガのアプリというと、比較的派手なデザインで、おもしろい要素が豊富にあるものを想像される方もいるかと思いますが、この作品数やユーザー数を考えると、デザインもわかりやすく明瞭で、誰でも使いやすいものであることが大切です。これはほかのLINEサービスも同じです。ですが、あまりにもそぎ落としたデザインになってしまっても良くない。シンプルだけど計算されているデザインを心がけています」

 ヒョンマンさんのそのイメージの源泉は、百貨店だ。

「百貨店の店舗を見ると、カテゴリーがきちんと整理されていて、商品を表すタグも統一されているためどこを見ても一貫性があり、ユーザーが混乱せずに探すことができるようになっている。LINEマンガもそういうサービスにしたいと思いました」

LINE株式会社 UIデザイン4チーム マネージャー ヒョンマン(Jeon Hyungman/全 炯晩)さん
LINE株式会社 UIデザイン4チーム マネージャー ヒョンマン(Jeon Hyungman/全 炯晩)さん

 そう語るヒョンマンさんだが、最初から「統一されたデザイン」の重要性を感じていたわけではない。

 ヒョンマンさんがLINE株式会社に入社したのは2011年の5月。それ以前は、韓国のウェブエージェンシーで、ウェブデザイナーとして仕事をしていた。当時はインタラクティブな要素が入っているデザインが好きであったし、それを求められることも多かったというヒョンマンさん。だがLINEでは、そういったデザインは答えが見つかるまでテストを繰り返すこともあった。

「『なぜだろう?』と最初は悩みましたが、やはり時間が経っても変わらない一貫性やアイデンティティ、LINEが追求する価値観がデザインにとってはとても重要であることに気が付きました。

LINEのサービスは、インパクトはあるがすぐ忘れられてしまったり、流行っているデザインが求められているわけではありません。LINEをはじめとする各ファミリーサービスは、1日に多くの人が使っていますので、デザインの要素をほんの少し変えただけでも、大きな影響がでてしまう。混乱を起こす可能性もありますし、会社全体のデザインスタイルや、ブランドが持っている価値観とズレてしまう可能性もあります。そう考えていくと、LINEにおいては『統一されたデザイン』のほうが合っているのだと納得することができました」

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